目次
【1章・老後の資産計画】
➀老後の必要資金の考え方■■②世代別に老後のための資産形成の考え方
【2章.年金】
➀年金制度■■②企業年金
【3章.年金が及ぼす社会変化】
➀老後資金計画が及ぼす人生設計の再考■■②年金市場が及ぼした金融業界への影響

【1章・老後の資産計画】

■➀老後の必要資金の考え方■

 高齢夫婦の生活費は公的年金以外に毎月約3.3万円必要となります。そして、老後全体では約2600万円が必要となります。

 これは、夫60~84歳、妻58~89歳までを引退期間として想定し、公的年金は65歳から開始を想定した総務省「家系調査(令和元年)」厚生労働省「令和元生簡易生命表」から算出したもののようです。

 夫婦2人で老後生活を送るうえで最低限必要だと思う費用の平均額は月22万円。

 66歳から仮に日本人男性の平均寿命80歳までゆとりある老後を送ろうと思ったら、合計2700万円(毎月あと15万円)が必要のようです。※10

 ざっと概算して、夫婦で3000万円(退職金以外で)という意見もあります。※3

 これらは生存率と老後の実態と年金の先行きによって把握することができます。

【生存率】

 1990年生まれの生存率

 90歳までは約70%、100歳まで約20%。

 厚生労働省「第5回社会保障審議会年金部会資料」を参照しているようです。

100歳以上の推移

2019年7.1万人から2050年には53.2万人になっていると推測。

因みに、2050年には日本人口は1億人、世界は約100億人を迎えていると推測されます。

【老後の実態】

 夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の実収入は、月21万3379円(年金などの社会保障・給付月19万4874円)で支出は27万5706円(△6万2000円)のようです。総務省統計局家系調査の結果によります。※10

 

■②世代別に老後のための資産形成の考え方■

【資産形成のフレームワーク】は、、、

 ➀いくら稼げるか

 ②所得はどの程度のベースで伸びていくか

 ③貯蓄や投資の利回りはどの程度か?

 ④勤労人生を通した所得の状況はどうか?

 ⑤子どもを何人つくるのか?

 ⑥どのくらいお金があれば、幸せを感じられるか?

 ⑦子孫にどのくらい遺産を譲り渡したいか?

 、、、になるようです。※1

●「1998年生まれ」の場合

 寿命100歳以上想定で貯蓄25%が目標になり、仮に公的年金がなしなら貯蓄は31%になるようです。

 3ステージの人生を送り、35年を超す引退期間を生きるモデルが機能しないのが理由のようです。

 3ステージの人生が経済的に軋みはじめているため、子どもである世代の多くに財産を残せない可能性が高いようです。

 引退後は不活発な生活を長期間続けている人は、認知能力が減退したり、人生に対する満足度が低下したりするようです。※1

●「1971年生まれ」の場合

 平均寿命は85歳の可能性が高く、長寿の厄災が恩恵より大きくなりつつある世代のようです。※1

 老後の生活資金を最終所得の50%と考え、長期投資利率を年平均3%と考え、所得の上昇ベースを年平均4%と考え、引退希望年齢を65歳とします。※1

 企業年金→受給できない

 公的年金→最終所得の10%相当

 貯蓄→毎年所得の17.2%

 勤労期間:引退期間=44年:20年=2:1

●「1945年生まれ」の場合

 平均寿命70歳前後、62歳で引退。8年後の70歳で死去。

 教育と仕事と引退という3ステージの人生が最もうまく機能した世代のようです。

 一家の主たる稼ぎ手はつねに主人でした。

 老後の生活資金の源としては

 ➀政府の公的年金―最終所得の最大10%相当

 ②勤務先の企業年金―最終所得の20%程度

 ③個人の蓄え―20%分の貯蓄をすれば足りたようです。

 これは勤労機関に毎年所得の4.3%を貯蓄すれば、希望するだけの老後資金の間でバランスをとることは比較的簡単だったようです。※1

【2章.年金】

 年金は「Pension」といって元は王族のお気に入りの人物への定期的な現金支給のことだったようです。※1

■➀年金制度■

 人口増加、経済成長に依存しています。

 勤労人口に対する引退人口の割合(老年従属人口指数)は、日本は1960年は10%で勤労者に対して引退者は10人に一人でした。しかし2050年には70%に増加し10人に対して7人になると考えられます。

 年金は賦課方式という新しく加わるメンバーが増え続けなければ維持できないというというものによって運用されています。※1

●修正積立方式

 日本は1944年に厚生年金が積立方式でスタートし、1954年の新厚生年金保険法で修正積立方式へと移行したという経緯があります。

 修正積立方式とは、引退高齢世代への給付については、そのときんぼ現役世代から徴収した保険料というキャッシュフローで賄うことを基本原則とし、その一方で、年金制度が成熟化(北欧諸国に見られるように、引退高齢世代の人口比率が高まったのち高位で安定する状態)していないときに徴収する保険料の一部を将来の給付原資として積み立てておき、年金制度が成熟化し現役世代の保険料で引退世帯への給付が賄えない場合、その不足分を積立金の運用収入で賄う仕組みのようです。※18

 社会保障制度の破たんをしのぐ唯一の方法が、高齢者/現役比率の増加を相殺するだけの持続的成長です。加藤久和明治大学教授によると、現在の世代格差を拡大させないだけでも2055年にかけての15歳以上65歳未満の人口減少率の人口減少率を相殺する年率1.3%程度の維持が今後必要になります。※18

【年金改革】は進んでいる方向はどの国も基本的に同じのようです。

➀公民が税金や保険料を納める期間を長くするために引退年齢を延長すること

②年金支給期間を短縮すること

➂年金支給対象を所得や資産の少ない人に限定すること

 の3つのようです。※1

■②企業年金■

【企業年金】

 企業年金の変革は、遅々として進まない公的年金の改革とは対照的に、急激に進行したようです。企業年金を維持するには金がかかるし、それは大半の企業が得意なことかもしれないようです。しかも、平均寿命が延びて、財務面の負担も重くなってきたためのようです。その結果、企業年金制度を設ける企業は激減しているようです。

 まだ維持されている企業年金制度の多くは、財務面での破綻を避けるために給付水準を引き下げているようです。

 企業年金制度を設ける企業が減り、公的年金の給付が薄くなることの意味は、火を見るより明らかのようです。将来は、老後の生活資金を蓄える責任がますます個人の肩にのしかかるようです。※1

 老後資金を確保する責任が個人に移っていく潮流を突き動かしている要因は世界共通のようです。先進国で賦課方式の年金制度を持続不能に追い込んだ要因、すなわち平均寿命の上昇と出生率の低下のようです。※1

【引退年齢】

 歴史を振り返ると、比較的最近まで引退年齢がもっと高かったようです。

 65歳以上の就業率は、イギリスでは1984年は8%に対し1881年は73%。アメリカでは1880年は80%だったようです。※1

 今後、年金がもらえる年齢は欧米諸国並みの67歳や、70歳まで引き上げになるという話も聞こえています。将来的には今より2話ほど支給額が減るかもしれないと言われているようです。※10

 ●確定拠出を使った場合の受取り方モデル

 一時金…積立と運用で築いた資産を一度にまとめて受け取るもの。60~75歳(2022年5月~)のいつ受け取るかは自由のようです。一部を一時金、残りを年金で受け取るなど併用も可能のようです。

 退職所得控除の基準…退職金とiDeCoで所得控除が共有され、超えた額の1/2に課税がかかるようです。iDeCoを先に一時金で受取り、5年以上後に退職金を受け取れば、枠を分けることができるようです。※13

 年金…最短5年~最長20年で分割して受け取れるようです。さらに年1回、4回、毎月などのパターンも選べるようです。給付中は口座管理料や給付手数料がかかるようです。

 公的年金等控除…同じ年に受け取る公的年金と企業年金で控除枠を共有するようです。65歳未満は年60万円、65歳以上は年110万円以下なら税金がかかんらないようです。オススメはiDeCoと公的年金の受給時期をズラすことのようです。公的年金は受給時期を繰り下げるほど年間支給額が増額されるようです。5年繰り下げて70歳からもらうと、65歳からもらうより42%も多くなるようです。

 iDeCoを年金でもらうなら、公的年金の受給を繰り下げて、空白期間でiDeCoを受け取るのがベストのようです。節税メリットが大きいうえ、公的年金額もアップになり、ダブルでオトクになるようです。※13

【3章.年金が及ぼす社会変化】

■➀老後資金計画が及ぼす人生設計の再考■

 国連の推計では、2050年までに日本は100歳以上が100万人突破します。※1

 日本の2050年の推計は1億人を切る可能性が高いため、人口の1%が100歳以上になるという事だと思います。

 長寿化に備えるためには、人生の締めくくりの時期への準備をするだけでなく、人生全体を設計し直さなくてはならないようです。※1

 かつては「教育→仕事→引退」という3ステージだったものが、多ステージの時代に到来するようです。※1

 そのため必要なのは「家庭でパートナーとの両方が職をもつこと」です。メリットは、経済的な責任を分かち合えば、長い人生に必要な資金を確保するうえでリスクを大きく減らせるようです。労働市場が激しい変動に見舞われる時代に、その意義はきわめて大きいようです。※1

 

 また人的ネットワークが必要なようです。人生が長くなれば、人生の途中で変身を遂げることが不可欠になるようです。それを実践するためには、自分について知ることと、自分とは大きく異なるロールモデルと接することが重要なようです。※1

 更に長寿化は新しい機会が開ける半面、若い頃に想像していたより高齢になるまで働き、収入を得続ける必要が出て来るようです。※1

 しかも、これから訪れようとしているのは、スキルの価値が瞬く間に変わる時代のようです。ういう時代には、手持ちのスキルでよしとせず、新しいスキルの習得に力を注がなくてはならないようです。※1

■②年金市場が及ぼした金融業界への影響■

1980年代半ば頃から、年金のような巨大資金を運用するには、個別株投資では企業リサーチがとうてい間に合わないようです。また、運用コストも嵩んでしまうということで、インデックス運用主体へとシフトしていったようです。※20

1980年代終わりごろ、機関投資の運用といえば「毎年の成績を追いかけるもの」という考えが定着されてきたようです。昔からの投資運用は欧州大陸系のプライベートバンキングなど一部で細々と残っているだけとなってしまったようです。代わって、世界の機関投資家の運用の大半は資金運用へと鞍替えてしまったようです。

 年金を中心とした巨大運用システム、ディーリング主体で毎年の成績を追い掛ける資金運用に、全面的といっていほどにシフトしたようです。※20

  年金運用を中心にして、世界的に機関投資家化現象が進んだようです。それによって、世界の投資運用ビジネスが大きく変容してしまったようです。毎年の成績を追い掛ける資金運用やディーリングが、機関投資家運用の主柱となってしまったようです。※20

■参考文献■

※1…『LIFE SHIFT』リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット(訳)池村千秋、東洋経済、2016.11.3

※3…『20代、結婚までに知っておくべきお金の使い方』野瀬大樹、裕子、クロスメディア・パブリッシング、2011.6.11

※10…『誰も教えてくれなかった!「確定拠出年金」利回り 20%の投資法』2016.11.5横山光昭、宝島社

※13…『ダイヤモンド・ザイZAI』2022.3月号 ダイヤモンド社 

※18…『2050 老人大国の現実』小笠原泰・渡辺智之、2012.10.18東洋経済新報社

※20…『大暴落』澤上篤人2021.6.16明日香出版

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